春の立山縦走   2004.5.15  長田 剛 

 5月15日、春の立山フェスティバルが開催されるという事で、普段の高原バス代等が安い。この機会を逃がしてはと朝7時に立山駅に着き出札口に並ぶと、顔馴染の宮下1号さんと3号さんが並んでいた。解散してから皆の動向が気になっていたが、道中話を聞いて、いろいろと活動しているのが嬉しくなった。中でも白馬から祖母谷へ、女同士で下りてきたと聞いて、驚いてしまいました。何処どこの歩こう会に参加したり、律子さんをリーダに来拝山も行ってきたと楽しく話しておられた。
室堂ターミナルで二人と別れて、準備を整え8時40分に室堂を発つ。天候は薄曇で、太陽に笠が架かっていて幾分肌寒い、額にタオルを巻いて予定の雄山を目指した。何時かは行かなくてはと思っていた春の立山。アイゼンをリュックに掛けて、ピッケル片手に黄砂で汚れた雪原を、先行者の足跡を頼りに忠実に歩を進める。夏と違って一の越しまでの雪原には等間隔に竹が刺してあって道標になっている。スキーやボードを担いで登る人やツアーの団体が連なっている。1時間弱で一の越しに着き槍ケ岳が歓迎してくる。スキーヤー達はここから浄土山を目指し、登山者は雄山へと二分される。黒部から吹き上げる風が冷たいが、中央、南アルプスが開けていて、八ヶ岳と甲斐駒、千丈岳の間に富士山が顔を覗かせている。
餓鬼岳後方に富士山 裏銀座東沢谷
五年ぶりの雄山だが登山道が室堂側に付いていて風の影響を受けないし、地肌が出ていて助かったが、雄山山頂では社を支えに写真を撮らなくてはならないくらい風が吹き荒れていた。大汝への登山道で風を避けて休んでいると、単独者が来る。予定を聞くと縦走をすると言う。私の今日の目的は雄山までであるが、16、17時には室堂に辿れると聞いて心が揺れる。保険会社への届け出は雄山までだし、このまま下りれば、昼に宮下1,3号のご馳走に在りつける。しかし、体力は充分残っているし、こんなチャンスはない。躊躇する時間が勿体無いと単独者の後を追う。
室堂平
大汝への道は、2箇所ばかりアイスバーンになっていた。歩行に支障はなかったが、幾分、先のことが心配になるがアイゼンとピッケルでどうにかなるだろうし、また途中でエスケープもできるだろうと安易に考えて、先行の単独者を追い越して大汝の頂上に立ち、富士の折立から真砂頂上に立つ。今までならショートカットして頂上を極めないで通過しているところだが、単独の気楽と時間に余裕がある技であろう。エスケープへの道は所々でブロック雪崩が起きていて危険で諦めるしかない。内蔵助小屋分岐道のケルンで風を避けて昼食を取る。内蔵助平から雪渓を詰める奴がいる。別山と真砂の鞍部は何時ブロック雪崩が起こるかもしれない状態なのに無茶な事をやるもんだと、他人事に関わらず自分は別山を目指す。御前小屋へのショートカット道はオーバーハングの雪渓が待ち構えていて別山への道を直登する。息を整えて祠の前に立つ。やはり別山からみる剣は一番と、デジカメを取り出して写すも、容量不足で慎重に削除しながら二枚だけ撮った。
剱岳 剱左奥毛勝三山

13時、御前小屋到着。雷鳥沢は一面雪に覆われていて下調べをしていなのでコース通りが心配になる。先行の3人組が山の陰に隠れるところを確認して直線的に下降するが、斜度がきつくなり、所々立ち止まっては足跡を探すが、ハッキリとした跡がない。微かな足跡を頼りに踵を雪面に入れる。滑った時に止めれる自信があるかと自問自答しながら、止めれる、止められると言い聞かしながら最初の急斜面を過ぎる。それでも先行者の足跡を拾いながら下る。右側はブロックが何時崩れても不思議ではないくらい気温が上がっているのが肌で感じてくる。漸く緩斜面にでて煙草を吸えるようになると雷鳥平である。スノーシューを履いた一団が迎えてくれた。ここから室堂までが最後の登り返しが待っている。帽子をタオル代えて先ずは雷鳥荘を目指して、歩幅が合う足跡に従って直登する。あとは、りんどう、血の池を巡ってみくりが池温泉へ辿り着けば、室堂ターミナルは直ぐ其処であった。14時50分、漸くターミナルの屋上に着いた。

               (記:長田 剛)